漁村ライフ

魚のしめ方に関する実験~潮氷と津本式~

ご無沙汰しております!皆様お元気でしたでしょうか?
ありがたいことに、輸出等でバタバタしておりますが私は元気です。
今回の投稿では、津本式と潮氷に関する簡易的な実験の結果を報告します。
是非ご覧ください!

赤坂水産の津本式ver2022

赤坂水産では、〆る真鯛全てに津本式究極の血抜きを実施して販売しております。
試行錯誤を重ね、2022年12月現在は、以下の①~⑧の流れで津本式を実施しております。

⓪活魚水槽に泳がしている真鯛をすくう


①魚の脳天に刃を入れて即殺する

■参考文献:マダイの「締め」における延髄破壊の重要性

②神経棒を鼻から挿入し、神経を破壊する

③脊柱下の動脈に切れ目を入れて、尾と背ビレの中間地点辺りの骨を断つ

④「潮氷」(海水を氷で冷やしたもの)に漬けて15分以上冷やしこむ

※冷やし込みの前に神経を破壊していない場合、ATPを消費し旨味が損なわれます。そのため注水の前に神経棒で神経を破壊しております。
■参考文献:マダイの脱血方法とその効果


(重量を測定し、場所を加工場へ移す)

⑤③の断面からノズルで注水し、その後、エラ側の動脈の切れ目からホースで注水する。

水量は抑えめ(下記の画像をご参照下さい)、魚体1kgにつき1.2秒を目安にしております。


⑥内臓やエラ等腐敗する部分を取る

血合い肉の膜に穴をあけ、腹部脂肪を除去するために、Tiny血合いウロコ取りが必須です

⑦冷所で魚を15分程度立てかけて、注水した水を排出する

真鯛の仕立てを繰り返すうちに、水量、注水の時間がかなり少なくてよいことが分かったので、立てかけの時間は従来より短くなっております

⑧タオルで水気を取り、梱包する

実験内容

身の鮮度保持力を高めるためには、④の冷やし込みがとても重要なことが分かっています。
そして、⑦の立てかけによる脱水もとても大切です。

しかし、④と⑦を実施することで1尾につき30分以上時間がかかってしまうこととなり、ありがたいことにどんどん増える津本式のご発注に間に合わせるためには、この時間を短縮させたいと思いました。
そこで、潮氷の浸透圧による脱水に着目しました!

「浸透圧とは、2つの濃度が異なる液体が半透膜(水は通しますが、水に溶けている砂糖などの分子は通さない膜)を介して隣り合った時に、濃度を一定に保とうとして水分が濃度の薄い側から濃い側に移動する圧力のことです。」
(出典:


そのため、海水や海水以上に濃い塩水に魚を漬けると、魚の水分や血液が海水に移動します。
津本式をしない魚の血抜きは、海水に漬けて、浸透圧の効果で血を抜く方法が良いとされています。
(多くの魚屋さんで取り入れられています)
潮氷に漬けることで水分が抜けるのなら、冷やし込みを後の工程⑦に持ってくることで、立てかけを省けるのでは、と思った次第です。
そうして以下の3パターンで魚を仕立て、一日経過した真鯛の味を職場のスタッフ全員で比較しました。

パターン1.津本式後に15分程度立てかけをしたもの、つまりスタンダードな津本式
パターン2.津本式後に全く立てかけをしなかったもの
パターン3.津本式をして、再び潮氷に投入し、15分程度置いたもの

3が1と同等以上に美味しければ、④の冷やし込みを手順⑦に移すことで、⑦の時間も立てかけの場所も必要となくなり、更なる効率化が見込めます
パターン2を実施した理由は、立てかけの効果を再認識したかったからです。


皆さんはどのような順番で美味しいと思いますか?
下の結果を見る前に想像して下さい!!



結果

実験結果を報告します。
したの画像の左から、パターン1.スタンダード津本式、パターン2.立てかけ無し、パターン3.潮氷脱水となります。
皆さんはどれが美味しそうですか?

左から1スタンダード津本式、2立てかけ無し、3潮氷脱水

美味しかった順は下記のとおりです。
10人程度で試食して、満場一致で同じ結果でした。

第一位 1.スタンダード津本式
第二位 2.立てかけ無し
第三位 3.潮氷脱水

正直この結果は私の予想外でした。
私の当初の予想では1と3が同じくらい美味しく、2が他に比べ美味しくないというものでした。
しかし3の潮氷脱水は美味しくなかった・・・(鯛がいいので十分美味しかったですが)
1と2の差より、2と3の差が歴然でした・・・
これは意外ではないでしょうか?

どのように美味しくなかったか・・・
1や2に比べ、3の潮氷脱水は明らかに雑味を感じました。
潮氷による脱血は古来より現代にいたるまで、多くの魚屋さんで使用されています。
潮氷脱血をしているものとしていないものだと、断然潮氷脱血をしたものの方が美味しいです。
効果は確かにあり、魚を漬けた後は海水が真っ赤に染まります・・・

パターン3の血管には津本式によって血の代わりに水が入っており、それは血以上に浸透圧で抜けてくれそうです。

それなのに、なぜ何もしないパターン2以上にマズくなったのか・・・
私はこの結果がとても面白かったです。
なぜなら、この結果は、今まで私たちが認識できなかった「潮氷による脱血の弊害」を教えてくれたと思うからです。

皆様は海水を呑んでしまったことはありますか?

あれこそ雑味の塊、この世の地獄のような味をしていると思います。
ご存じの通り、海水には塩以外にも色々なものが含まれており、それがあの雑味を織りなしているのだと思います。

今までにも潮氷脱血だけを施した魚に、雑味を感じたことがあります。
(というか、それがなければ津本式にハマりません)
しかし、それは十分に抜けていない血が原因だと思っていました。
今回津本式をしたパターン3は、血は十分に抜けているはずです。
つまり、今まで潮氷脱血で感じていた雑味は、血および、海水そのものによるものであるかもしれないと感じました!
これが正しいとどうなるか?
今まで活魚(生きた魚)は、フリフリ(海水の中で魚を振り能動的に脱血させる方法)や潮氷脱血である程度血が抜けるので、津本式の恩恵は薄いとされてきました。
しかし、この結果を踏まえると、
フリフリや潮氷脱血だけでは海水の雑味が残ってしまうので、やはり津本式を実施し、血と海水を綺麗に取り除いてあげた方が美味しいということになりませんか?

結論、「活魚であろうが鮮魚であろうが、津本式をした方が雑味のない上品な味に仕上がる」


また、少数意見で1より2の立てかけ無しのものの方が身質はいいというようなものもありました。
(神の舌を持つ私は感じませんでした)
あやまりか?個体差か?立てかけにも何らかの弊害があるのか?
まだまだ知らないことがいっぱいあって面白いです!!
サンプル数が全く足りないので皆様もどうぞお試しください!!

下関海峡マラソン2022に参加してきました

2022年4月に始めたランニング。
2022年11月に開催された下関海峡マラソン2022で初めてのフルマラソンに参加してきました!


結果は3時間19分13秒でゴール出来ました。
目標である愛媛マラソンや徳島マラソンのアスリート枠、大分別府マラソンの参加条件を満たす3時間30分を切ることが出来ました。

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4月から続けているランニングやマラソンへの参加は完全に、ただ、自分がしたいためにしています
支えて下さっている皆様には頭が上がりません。
ランナーの方には分かってもらえると思うのですが、30km地点ぐらいで与えられた環境への感謝の気持ちが溢れ、いつも泣きそうになります笑   

恩恵?として、仕事も私生活も社会活動でも、私の行動は全て、「何かのためではなく、自分がしたいためにしている」と思えるようになりました。
事実そうだと思います。
そう考えると、本当に私に関わってくれる人々、取り巻く環境に、憤ることや過度に期待をすることが少なくなったように感じます。
自分はしたいことを好きにやらせてもらっているから、そんな私に関わってくれる人々、そして、社会や環境には、少しでも恩返しが出来るよう、ちょこちょこ頑張っていく所存でございます。
どうぞよろしくお願いします!








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